自治体業務におけるデジタル化の波が加速する中、世田谷区はAiCANサービスシステムを導入し、記録作成業務を大幅に効率化することに成功しました。
前編に続き、後編では、実証実験から本導入に至るプロセスで直面した課題や、それを乗り越えた具体的な手法を掘り下げます。また、システム導入後に現場で起きた変化や成果をデータとともに検証し、さらなる展望について詳しく探ります。
━━ 実証実験から本導入に移る際、どのような壁がありましたか?
山口(純)(児童相談支援課):大きく分けて2つの課題がありました。1つはタブレット端末の調達です。もう1つは情報セキュリティ基準を満たすことでした。
━━ タブレット端末の調達について、特に難しかった点は何ですか?
山口(純):AiCANサービスを利用するための端末は特定の仕様を満たす必要があるのですが(注:2025年1月時点で「iPad端末:SIMフリーのWi-Fi+cellularモデル等」が必要)、端末を調達するまでに必要なプロセスを確認し、「何を」「どこまで」「いつまでに」準備しなくてはならないか整理するのに時間がかかりました。併せて、庁内の契約手順に則ってどのように事務を進めていくか確認調整することも労力を使いました。また、条件を満たす端末を必要数確保するための予算確保の段階で、調達するルートや端末をリースするか購入するか比較検討が求められたのも難航したポイントでした。
━━ セキュリティ対応に関しては、どのように進めましたか?
山口(純):個人情報を取り扱う端末を外出先で使うという運用を想定していたので、個人情報の漏洩リスクにどう対処するか、庁内の情報政策部門と何度も協議を重ねました。
現在は、多要素認証を導入して端末を起動するときとAiCANアプリにログインするとき、いずれの場合にもパスワード等が必要となるようにしています。また、アプリ画面を開いているところを外から見ても個人が特定されないように、個人名の一部をマスキング処理するような機能を追加していただきました。こうした改善策を積み上げていき、情報政策部門の理解を得ていきました。
━━ 情報部門の信頼を得るために工夫した点はありますか?
山口(純):提案段階から情報政策部門の担当職員も巻き込み、課題を共有しながら進めたことが信頼につながったと思います。また、リスク低減のためにシステムの内容を改善できないか、というこちらの提案に対して、AiCANの担当者の方が前向きに受け止め、他の自治体においても有益な改善であれば機能追加を行うなど、一つ一つ対応して頂けたのが大変ありがたかったです。
━━ 全面導入が始まった際、現場ではどのような反応がありましたか?
山口(純):もともと令和6年7月から導入開始を予定していたのですが、調達などの都合で導入が10月に後ろ倒しになったのですが、そのときは現場には非常に残念がられていました。実証実験参加者からは、実験終了時に「名残惜しい」という声も聞いていました。
という状況だったので、10月の全面導入が始まった際には「待ってました」というような雰囲気があり、反応は非常に良かったです。特に実証実験を経験していた班の職員たちは「これでようやく業務がスムーズになる」と喜んでいました。自分もその様子を見て、導入してよかったなということを改めて実感することができました。
━━ 全面導入時にトラブルのようなものはありましたか?
山口(純):特にトラブルのようなことは起きませんでした。新しいことを始めるので、最初から全てが見えているわけではなく、運用しながら細かい部分を調整していくことは必要とは思っていたのですが、前提となる考え方については関係部署と事前に密に調整していたこともあり、スムーズに導入できたと思っています。
━━ 改めて導入の進め方を振り返ってみて、何が重要だったと思いますか?
山口(純):AiCANさんが開催してくださった他自治体との合同意見交換会に我々企画調整担当職員や現場となる児童相談所職員も参加させていただいたのですが、同じ課題を抱える自治体の方々と直接お話しする機会が得られたのは本当に大きかったです。例えば、導入のプロセスで出てくる課題やその解決策についても、他の自治体の成功例や工夫を聞くことで「自分たちでもこうできるんじゃないか」というヒントを得られました。
また、補助金の申請に関しても連携の効果を強く感じました。例えば、今回活用したデジタル田園都市国家構想交付金の補助金の申請を進める際に、すでに採択されている他の自治体の申請事例を共有していただいたおかげで、スムーズに進められました。こういった横の繋がりがなければ、正直、申請はもっと難航していたと思います。
━━ AiCANサービスを導入後、現在何か課題に感じていることはありますか?
山口(純):既存の業務システムとAiCANサービスの連携については何か改善できることはないだろうかと個人的には思っています。既存システムとAiCANサービスは現状完全に独立した形で運用しているので、双方で情報を連携させようとするとアナログな作業が必要になります。
具体的には、現在「AiCANサービスで入力したデータをCSVファイルとして出力し、それを既存システムにコピ―アンドペーストで貼付する」という作業を人力でやっています。複雑な作業ではないのですが、一定の負担ではあるので、こうした部分も何らかの形で改善していけるといいなと思っています。
既存システムにコピーアンドペーストする時間を含んでも業務効率化が大きく進むということで導入していただきましたが、AiCANサービス側でも課題として認識している点なので、今後のアップデートの中で何か対応していければと思っています。
(参考記事「令和5年度実証実験結果レポート―記録時間を約6割削減―」)
━━ 今回は、お忙しい中インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
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